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渋谷の子
あの日から5年が過ぎて
俺は東京の弱小広告代理店で
企画部でデザイナーをしている。
「三田君、今夜どう?多分7時には終わると思う」
「いいよ。それまで仕事してるから電話して」
「りょ」
今の彼女、澤井阿月、23歳。
3つ下だけど入社は同じ年だった。
俺の名前は三田月。
変な名前。先輩の名前。
だからなの?「三日月」が好きなの。
なわけねえじゃん。
それに「つき」じゃなくて「ひかり」だから。
優果と出会った頃、そう言って馬鹿にされた。
阿月が8時になってもメールもなければ
来る事もなかった。
所謂待ちぼうけ。
「三田、まだ仕事?」
営業の矢作孝介が背中に手を当てた。
「孝介、帰り?」
「うん、彼女待ってんの?」
「7時には終わるって」
「え?聞いてねえの?」
「何を?」
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