渋谷の子

1/5
前へ
/16ページ
次へ

渋谷の子

あの日から5年が過ぎて    俺は東京の弱小広告代理店で     企画部でデザイナーをしている。 「三田君、今夜どう?多分7時には終わると思う」 「いいよ。それまで仕事してるから電話して」 「りょ」 今の彼女、澤井阿月、23歳。    3つ下だけど入社は同じ年だった。 俺の名前は三田月(みたひかり)。       変な名前。先輩の名前。    だからなの?「三日月」が好きなの。        なわけねえじゃん。   それに「つき」じゃなくて「ひかり」だから。 優果と出会った頃、そう言って馬鹿にされた。 阿月が8時になってもメールもなければ     来る事もなかった。     所謂待ちぼうけ。 「三田、まだ仕事?」 営業の矢作孝介が背中に手を当てた。 「孝介、帰り?」 「うん、彼女待ってんの?」 「7時には終わるって」 「え?聞いてねえの?」 「何を?」
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加