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* 人生には2種類の悲劇がある。 受動的な悲劇と能動的な悲劇だ。 どうあがいても自分ではどうしようもない前者に対して、自分で選んでしまったが為に苛まれた悲劇は後悔ばかりが募る。 目の前の男、常盤蛍は、私にとって能動的な悲劇の象徴そのもの。 もう、1秒たりとも私の人生に関わって欲しくないのに。 「おかしいなぁ。…失礼でなければ、お名前伺っても?」 「な、名乗る程の者では…」 「え?それ、なんのジョークですか?もしかして家政婦さんじゃなくて不法侵入者?」 「まさか!!歴とした家政婦です!!」 「本当に?昔から多いんですよ、ストーカーの類。もしかして見覚えあるのって、俺の跡つけてるから、とか?」 「違います!断固として違います!」 やばい。疑われている。私の信用が落ちるのは構わないが、圭子さんの評判が落ちるのは避けたい。必死に首を横に振れば「怪しい」と胡乱げな瞳を向けられて焦りが増す。 身バレは絶対にしたくないが、会社は巻き込めない。だってこの人はVIP客。 「私『クリーンメイド』から派遣された家政婦です。名乗り遅れて申し訳ありません。田中と申します」 「田中…さん?」 「はい。田中です」 「下のお名前は?」 「えっ」
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