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「ま、待ってください!!!!」 慌てて彼の腕を引っ張って耳元からスマホを引き剥がす。こんな大声を出したのはいつぶりだろう。 「警察だけは、、やめてください。お願いしますっ、」 「…疑われたくないなら、初めから本当の事を言えば良いのでは?」 「…申し訳ありません。その、私も…と、常盤さんの突然の帰宅に驚いてしまって…」 視線を落とすと、震える自分の手が目に入る。幾らするのか考えるのも怖い手触りのいいシャツには握った形状の皺。ハッとなって手を離し、行き場のない両手を体の前で固く握った。 クリーニング代請求されたらどうしよう。こんな時ですら過ぎるお金の心配。 弱者は何年経とうが弱者なのだと思い知らされたようで、諦めに近いどんよりとした感情が燻った。 「本当に申し訳ありません。圭子さん…代表に確認して頂けないですか?」 深々と頭を下げ、許しの声が掛かるまで足元を見続ける。プライドなんてくだらないもの、とうの昔に消えたと思っていたのに、頭を下げている相手が常盤蛍なのだと思うとムカムカと苛つきが迫り上がった。 だけどもう、感情任せに怒鳴り散らかす子供ではないのだ。私は。 辛酸を舐め、底辺を知って、惨めな大人になってしまった。
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