884人が本棚に入れています
本棚に追加
これは線引き。
私とコイツ。庶民と選民。過去と現在。かつては同じ世界にいたとしても、今はもう違う。あの頃と同じ感覚でいられては困る。
「…もうすぐ代表が戻るはずなので、処分についてはそちらで話されて頂けますか。それでは」
「待てよ」
焦げつきそうな視線に見つめられて思わず俯く。昔から変わらず眩いコイツに比べ、私のなんと小汚い事。23にもなって化粧一つしてない顔を、手入れすらまともにでない自分を、見られるのが恥ずかしかった。
見下されるのも、逆に同情されるのもごめんだ。
まぁ常盤蛍相手なら、どんな態度を取られても癪に障るが。
「…何でしょうか」
小さく呟けば、彼はまた手を伸ばして私の腕を掴んだ。ギリギリ乱暴ではない、でも決して優しくはない掴み方で。
「常盤様、なんて随分他人行儀じゃん」
「お客様ですので」
「俺はこんなに会いたかったのに、お前は違うの?」
とんでもないセリフに、鼻で笑いそうになる。
どの口がそんな事を。お互い嫌な記憶しかないだろうに。
「…常盤様…無礼は謝罪致します。ですので、手は離していただけると」
「元カレ相手に、ちょっと冷た過ぎねぇ?」
ああ、ほんと。めんどくさい男。
「なぁ、菫。昔みたいに呼べよ。蛍って」
最初のコメントを投稿しよう!