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因縁
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常盤蛍という男は不遜な男だ。
生まれながらに特殊な環境が、彼の性格を捻じ曲げたに違いない。
私達の因縁は3歳にまで遡る。
都内の有名私立幼稚園。大学までエスカレーター式のそこは親の財が物を言った。学力の高さで入学してくる中高生とは違い、幼稚舎組は、政治家の息子だの社長令嬢だの、紛うことなき富裕層の集まり。
私も例に漏れず、当時は投資家の娘として何不自由なく暮らしていた。
その中でも一際異彩を放つ男。それが常盤蛍。
まず桁が違う。都内有名ビルの殆どは常盤の持ち物だったし、常盤の一声で首相を変えれる、とまで言われていた。
だが、それだけが特別な理由ではない。
常盤蛍は大企業の御曹司なのに、母親が不明だったのだ。
というのも蛍の父、常盤右京はずっと独身。誰の子なのか、どう生まれたのか。都市伝説の様な噂が当時からあった。何処の馬の骨とも分からない、を地でいく人間である。
更にはその美貌。目立つ一番の理由はそれだろうが、とにかく美しい。陶器のような落としたら割れてしまいそうな儚さ。
そして、外見からは想像もつかない苛烈な性格。
殆どの子供は入園と同時に常盤蛍への恐怖を刻み込まれた。かく言う私も、その存在に怯えていた1人である。
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