第3章 庇護

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 この間と同じ、校舎裏の湿っぽい空間に到着すると、あのときと全く同じメンバーが4人そろって、私たちのことを待っていた。  主犯格っぽい女の子、須藤さんは、またも同じように非常階段のところに座ってスマホをいじっている。彼女は何のためにここにいるのだろうか。  そんなふうに周りを見ながら立ち尽くしていると、取り巻きの3人のうちのひとりが、にやにやとしながら口を開いた。 「内田、よくこいつのこと連れてこれたね。逃げられなくてよかったねえ」 「……」 「じゃあ内田は帰って。まあ、あんたも一緒に遊びたいなら、ここに居ても良いけど?」  目の前の彼女にそう言われると、内田さんは前と同じように、その場から走っていなくなってしまった。  良いのだ、これで。これで内田さんが彼女たちから逃れられるならそれでいい気がする。  そんなことを考えながらぼうっと向こう側を見る。視界の端に映る須藤さんは、やっぱり、ずっと足を組んで座ったままだった。今日も、私の様子には興味はないらしい。  須藤さんの様子に気を取られていると、私の目の前にいる3人のうちのひとりが、私の肩を思い切り突き飛ばした。  後ろに倒れこむ私に、3人が近づいてくる。ひとりが私の手を踏みつけてきた。比喩ではなく、手の骨が潰れそうになる。 「あんたさ、今から服全部脱いで?」 「え……」 「別に良いでしょ? ビッチなんだから」  ほら、と言いながらも、彼女たちは私の手を踏みつけたままだった。何もできずに呆然とする私を見て、彼女たちはけらけらと笑っている。  固まってしまった私を見て、ひとりの子が私の制服のシャツを両手で掴み、左右に思い切り引っ張った。ボタンが飛んで、シャツの前側が開かれる。  シャツを私の身体から引き抜こうとする彼女たちに対して、身体をよじりながら抵抗してみるも、そんな私の行動は余計に彼女たちの怒りを買ってしまったらしい。私は彼女たちに、思い切り殴られた。 「ねえ、これ、何?」  私のシャツを無理矢理剥いだ女の子のひとりが、私の胸元を指差して言う。  私は目線を下げて、自分の身体を見た。そこには、先日綾人くんにつけられた生々しいキスマークが、ありありと残されていた。
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