第3章 庇護

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◇  長い夜が終わった。痛さと苦しさと、ほんのちょっとの快楽が混じっていたその行為が終わって、窓の外から朝の光が差し込んでくる頃、私は目をつむって眠ったふりをしていた。  このまま、私が眠ったと勘違いをした彼が、学校に行ってくれることを強く願った。昨日は上手くいったのだから、今日も何もなければ、上手くいくだろうと思っていた。  しかし、物事というのはそんなに上手くいかないらしい。閉じた瞼の向こうで、彼がこちらに向かってくる音が聞こえた。 「お前、起きてる?」  反応せずに、ただ呼吸を繰り返す。すると彼は、私の頬を強く叩いた。  突然の衝撃に、私は思わず目を開いてしまった。恐る恐る彼の顔を見ると、彼は無表情で、冷たく私を見下ろしている。 「ほら、やっぱり。昨日から少しおかしいと思ってたんだ」 「どうして……」 「お前が薬のせいで眠っていたときの寝息と、昨日と今日の寝息が違うんだ」  何のつもりかわからないけど、むかつくんだよ、そういうの。  そう言って彼は、少しだけひりひりとする私の頬を慰めるように、それを優しく手のひらで包み込んだ。 「どうして、眠ったふりなんてするんだよ」 「……怖かったの、嫌な夢を見るから」 「へえ。でも俺にとっては夢を見てくれる方が都合良いからさ、眠っててほしいんだけど」  どうして、と問いかけると、彼は私の手首にかけられた結束バンドをなぞった。
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