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あまりにも暴力的な眠気に苛まれながら、私はドアの内鍵を開けた。最悪、依央が外から開けてくれれば良いと思った。
本当ならば、綾人くんが家にいないことを依央に知らせるために、カーテンを半開きにする約束だったのだが、私にはもうそこまでのことをする気力がない。
依央、本当にごめん。
そんなことをぶつぶつとうわごとのように呟きながら、私は綾人くんのことを考えた。
綾人くんは多分、私のことを好いているみたいだったけれど、多分その気持ちは、ひどく自己中心的なものだ。
夏目先輩も、祥平も、綾人くんも。みんなみんな、私を独占したいだけなのだ。それなのに私はこうやって、特定の相手に傾倒することなくふらふらしているのだから、きっと彼らの行動はエスカレートしてしまっているのだろう。
選ぶこと、というのは、労力を必要とする。このまま、穏やかに、誰かに助けられながら生きていくのではどうしてダメなのだろうか。私が悪かったのだろうか。
そんなことを考えていると、意識が限界に近づいてきた。私は玄関の扉の前に倒れ込んだ。
「依央……たすけて」
目を閉じたとき、瞼の向こう側に人がいる気配がした。
それが誰かはわからなかったけれど、なんとなく、私はそのひとが彼だろうと思っていた。
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