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「祥平、それ、食べたい」
祥平の方に身体を寄せて、彼の目の前にあるお弁当の中身を指差した。
「どれ?」
「これ」
「ひじき? いいよ、好きなだけ」
彼は私の方にお弁当を寄せた。私はひじきを箸でひとつまみだけ取って、そのまま口の中に入れた。おいしい、というと、祥平はひじきの入ったカップをそれごと取り出して、黙って私の目の前に置いた。
それから私たちは、たまに会話を交わしながら、だらだらと食事を摂った。何度も食べる手を止めたり、あるいは食べ始めたり、横になったり、祥平のスマホで一緒に動画を見ながら休憩をしたりした。
祥平との食事は、まさに自由と安心そのものだった。
彼は、私が小鉢の中身を残しても何も言わないし、逆に私が気に入ったものにはおかわりを作ってくれる。そんな、普通だったら咎められそうな食べ方をしているのに、祥平はそんな私を肯定してくれる。
怒られる心配がないというのは、私にとってかなり重要なことだった。委縮したら、余計に食べ物を食べられなくなるからだ。
食事のマナーとかルールっていうのは社会的なものだから、ふたりでいるときはとにかく、食べられるものを好きなように食べてくれれば俺はそれで良いって、祥平は言ってくれた。私はその言葉に救われている。
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