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祥平がテーブルの上に並べてくれた小鉢を箸で突きながら、私はそれらをゆっくりと咀嚼した。
久しぶりに満たされていく胃の容量を身体いっぱいに感じる。口を動かす私を見て、祥平は嬉しそうに私の頭を撫でた。
けれど、祥平によってもたらされた穏やかで心地よい食事の時間を、ぐちゃぐちゃに掻き乱したのは祥平自身だった。
「なあ、俺、ここに来るとき、お前のクラスの依央くんとすれ違ったんだけど、どういうこと?」
祥平の放った声を聞いて、私は身体をこわばらせた。
恐る恐る彼の顔色を窺う。怒っている様子はなくて、単純に疑問に思っているだけなのか、彼の表情は心なしか穏やかに見えた。けれど、その表情の裏に何が隠されているのかがわからなくて、やっぱり恐ろしかった。
「知らない……」
膝を抱えながら、祥平の肩に頭をもたれさせた。顔を見られたくなかったのでそうしただけだったが、彼は心なしか満足そうな顔をしながら、もう一度私の頭を、そのごつごつとした骨ばった手で撫でた。
どうしたら良いかわからなかった。私はただ、毎日、何とか生きたいだけなのに。どうしてこんなにも、苦しい気持ちにさせられるのだろうか。
私は、誰に守られるでもなく、ただひたすらに、幸せを追求したいだけだったのに。
第3章 庇護 end
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