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第4章 変性
「男の子が来るなんて、聞いてないな」
どういうことか説明してよ、と夏目先輩が古臭い椅子に腰掛けながら、不機嫌そうな顔をした。
私は、制服のスカートに手汗を擦り付けながら、依央の少し後ろで夏目先輩の様子を伺った。この制服は、この学校の卒業生だったらしい依央のお姉さんから借りたものだった。
そして放課後、生徒会室に私と依央が訪れると、この通り夏目先輩が優しい笑みを浮かべながら、私たちに冷たい視線を送っている。
夏目先輩と目が合う。途端に、感じたくもない眠気が湧き上がってきそうになって、私はそっと彼から目線を逸らした。
「それに、その彼は誰なの? どうやら、きみが前に言っていた祥平というやつではなさそうだけど」
「別に、俺が誰だって良いじゃないですか」
依央は怯むことなく、夏目先輩に向かって言葉を放っていく。
夏目先輩は、まるで汚いものでも見るかのような目を依央に向けていた。
「ふうん。じゃあ、早く用を済ませて帰ってくれない? もちろん、後ろで隠れているきみは残ってくれて構わないけれど」
どうせなら、眠って行きなよ、と言いながら私の方を見つめる夏目先輩の視線から逃れるために、私は依央の方に近寄った。椅子に座る彼は、さらに怪訝そうな顔をした。
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