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沈黙を破ったのは依央の方だった。
「こいつのいじめを陰から扇動してたのって、夏目先輩ですよね」
単刀直入にそんなことを言う依央の言葉の意味をすぐに理解したらしい夏目先輩は、うっすらと笑みを浮かべた。
「へえ。そういうことを聞いてくるんだね。でもさあ、聞くところによると、彼女へのいじめは、2年生の女の子たちの間で起きていることだろう? 僕には関係ないよ」
「この期に及んで、言い逃れですか」
「言い逃れなんて、人聞きが悪いな」
夏目先輩はへらへらと笑っているが、その目は全く笑っていない。そして時折、依央に向けていたはずのひどく恐ろしい視線を私の方にも送ってくるものだから、思わず足がすくみそうになる。
しかし依央に関してはその限りではないらしい。彼は言葉の端に苛立ちを含ませながら、まっすぐと夏目先輩に向かっていった。
「夏目先輩が、こいつをいじめるようにマナに命令したんですよね?」
依央の口から、須藤さんの名前が出てくる。
依央が達した結論はどうやら、夏目先輩が須藤さんを脅して、須藤さんたちに私のことをいじめさせていた、ということらしい。非常階段のところで携帯をいじっていた彼女のことを思い出すと、なんだか胸が苦しくなってくる。
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