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「そんなくだらない憶測立てちゃって、どうしたの。僕はその子の嫌がらせになんか、関与していないよ」
夏目先輩の言っていることが嘘だということは、わかる。彼は確かに、私が夏目先輩のものになるなら、いじめはなくなるだろうと言っていたのだから。
依央の制服の裾を掴む。それに反応するかのように、依央は先輩を捲し立てた。
「先輩、もうそろそろ、そういうのダルいですよ」
「ああそう。でもね、証拠もないのにそんなことを言われるこっちの身にもなってほしいな」
「火のないところに煙は立たず、じゃないですか」
「やだなあ。疑わしきは罰せず、でしょ」
「……」
先輩は相も変わらず、言葉遊びがおじょうずだ。
のらりくらりと依央の言葉を躱しては時折それをおちょくる夏目先輩が、とんでもなく性悪に見える。
「僕、男の子と話す趣味はないんだよね。ねえ、きみ、後ろに隠れてないでさ、何か言ったらどうなの?」
夏目先輩がこちらをまっすぐと見つめてくる。私はおそるおそる、口を動かした。
「先輩、本当のことを教えて欲しいんです」
「僕、君に嘘をついたことはないんだけどな」
嘘つきな夏目先輩が放ったその言葉自体、きっと嘘なのだろう。私はどうしたら良いかわからなくなって、口をつぐんだ。
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