9人が本棚に入れています
本棚に追加
「僕はねえ、きみのことが好きなの。それはもう良いよね?」
夏目先輩が私に優しく問いかけてきた。
全然良くはないのだが、とりあえず頷いておく。
「どうやらきみは、嫌なことがあると僕のところに眠りに来てくれるらしくてね。好きな子をいじめたくなっちゃうような幼稚な小学生だった僕は、高校生にもなって、きみのことをいじめたくなってしまったわけ」
「……そんなことは別に良いんです。須藤さんのことを教えてください」
「急かさないでよ」
夏目先輩が手足を組んで、椅子の背もたれに深く体重を乗せた。
「祥平と別れて傷心だったマナに近付いたのは僕の方からだよ。ちょろかったな。丸腰でここに来てくれたんだから」
「そんな……」
「マナがここに来たのは合意の上だよ。そこのソファーの上に座ってくれたのもね。その先はどうだったか、あいにく覚えてはいないけれど」
夏目先輩がへらへらとした口調で、私がいつも眠りに沈んでいるソファーを指差した。
「……それで」
「あとは想像の通りさ。マナがあまりにも可愛いものだから、っていうのはさすがに冗談だけど、とにかくマナのそういう姿を動画に撮って、それをダシにして僕がマナを脅して、きみをいじめさせていたのは確かだよ」
夏目先輩は腕を組み直しながら、つまらなそうな顔をして私と依央の顔を見た。
「んで、きみたちは僕をどうしたいの?」
最初のコメントを投稿しよう!