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「先輩、どうしてそんなひどいこと……」
夏目先輩の方を見つめながら、そっと呟く。すると彼は、眉を顰めて怪訝そうな顔をした。
「彼女がいたはずの祥平をたぶらかしたのは、きみの方だろう? 祥平とマナが別れたのはきみのせいでしょ。あいつらが別れていなかったら、僕がマナにつけ入る隙はなかっただろうし」
「そんな、私」
「きみだって、元はと言えば立派な加害者だよ」
すこしずつ、すこしずつだけれど、事態が見えてきた。
私が祥平と会うようになってから、祥平は須藤さんに別れを告げたのだろう。そして須藤さんが傷心しているところに、夏目先輩がやってきたんだ。
夏目先輩が須藤さんに何を言ったのかはわからない。けれどどうせ、いつもの調子で優しい言葉をかけたのだろう。
夏目先輩は須藤さんを生徒会室に連れ込んで、須藤さんを襲って……
それ以上の光景は、想像したくない。
夏目先輩に無理矢理、そういった類の動画を撮られた状態で、彼女はどんな気持ちであの非常階段に腰掛けていたのだろうか。
手が震えてきた。今まで知らなかった事実がまざまざと目の前に降りかかってきて、私は立ち尽くしたまま何もすることができなかった。
誰が、悪かったのだろうか。
私が、悪かったのだろうか。
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