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夏目先輩が、つらつらと自分の罪について語る声が、依央のスマホから聞こえてきた。
依央は、証拠がある、と言いながらスマホを取り出した際に、ボイスレコーダーで録音を始めていたのだ。私と夏目先輩の会話に口を挟まずに、静かにそれを聞いていたのは、こうやって夏目先輩の語りの一部始終をありのままに録音するためだったのだろう。
夏目先輩は、依央のスマホから流れる自分の声を聞いて、少しだけ目を丸くしたが、依央の言いたいことを察したのか、鼻を鳴らしながら腕を組んで、不機嫌そうな顔をした。
「へえ。依央くんって趣味悪いんだね」
「夏目先輩にだけは言われたくないです」
「……そこまでされちゃ敵わないな。それじゃあ僕がマナにした脅しと同じじゃないか」
「夏目先輩が始めたことですよ」
「やだなあ。その子が始めたことだよ」
ね、と夏目先輩がこちらに甘い視線を送ってくる。私はそれから逃れるために、依央の制服の裾をぎゅっと握りしめた。
「だから、こいつにも、マナにも、もう手出さないでください」
「ちなみに、どうして依央くんがそこまでするわけ?」
きみって別に、何も関係ないじゃん、と夏目先輩が付け加えた。
確かにそれは、私も気になっていた。ある日突然、依央が虫の入ったロッカーを片付けてくれたあの日から、依央は私のことを助けてくれるようになったが、その行動の根底にある動機が、まったくわからないのだ。
依央はすこしだけ黙り込んだ後に、ゆっくりと口を動かした。
「俺、こいつの彼氏なんです」
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