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◇
お前にとってもショックなことだったろうから、今日はゆっくり休めよ。
そう依央に言われたので、私はそのまま家に帰っていた。確かに、圧倒的な情報量のせいで、私の頭はパンクしそうだった。
夏目先輩は多分、いじめをやめてくれるだろうとは思うけれど、そんなことよりも、私は須藤さんのことを考えていた。
私のせいで、祥平と須藤さんは別れたのだろうか。
私のせいで、須藤さんの幸せはなくなってしまったのだろうか。
私のせいで、夏目先輩が須藤さんに付け入る隙ができたのだろうか。
私のせいで、須藤さんはあんなことになってしまったのだろうか。
そんなことを考えると、途端に胸が苦しくなる。
私は今まで、自分が嫌がらせを受ける理由に目を背けて、自分のことも、周囲のことも何一つ考えてこなかった。
これは、そんな私に対する報いなのだろうか。何だか、頭が痛くなってくる。
何もできずに、シミだらけの天井をぼうっと眺めた。綾人くんの家とは似ても似つかない、汚い部屋の中で、ただひたすらに色々な人の顔を思い浮かべる。
もう、夏目先輩のところで眠ることはできない。
だからこそ、私は少しずつ、変わらなければならないと、そう思って、ゆっくりと瞼を落とした。
眠れなくてもよかった。ただこうやって、身体を休める癖をつけなければならないと、そんな義務感から行われた行為だった。
その時だった。
玄関の扉が、コンコン、と音を立てる。
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