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思わず、嫌だ、と言って、私は彼の肩を思い切り押した。
私に抵抗されると思っていなかったのか、祥平の身体はいとも簡単に私から離れた。私は肩で呼吸をして、身体をよじりながら、何とか彼の腕から逃れる。
祥平は、まるで力が抜けたみたいに、ぽかんと宙を眺めている。彼の行動の意図がわからなくて、私はひどく混乱した。
「……ごめん」
そんな言葉をこぼしたのは、祥平の方だった。私は彼の言葉に頷きながら、それでも警戒を解くことができず、ただその場で固まることしかできなかった。
「俺が悪かった。だから、だから、お願いだから食べてくれ。そうじゃないと、俺……」
「ねえ、祥平。変だよ、今日」
祥平からそう縋りつかれると、余計に食欲がなくなってきた。人から見られながら口にものを運ぶのが苦手だということは、祥平が一番よくわかっているはずなのに。
けれど、祥平があまりにも私のことを急かすので、私は仕方なくテーブルの上に置いた食べかけの菓子パンを手に取った。
祥平を落ち着かせたいと、そんな気持ちで菓子パンを口に運ぼうとするが、あまりにも祥平が苦しそうな顔でこっちを見てくるものだから、私は手が震えて、その甘ったるいドーナツを口に入れることができなかった。
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