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◇
どうしたらいいかな、と発した言葉は、誰にも届かないまま消えていった。
昼休み、体育館倉庫裏の人目につかない空間で、依央が目の前で足を組んでいる。すこし話したい、と言い出したのは私の方で、二つ返事で私の後をついてきたのは依央の方だった。
それなのに、依央は私の言葉に興味もなさそうなそぶりを見せている。私の話を聞いてくれると思っていたのに、どうして彼はつまらなそうな顔をするのだろうか。
彼の真意がますますわからなくなってしまって、私は彼の顔を覗き込んだ。
「依央、聞いてる?」
「聞いてるって」
苛立っているわけではなさそうだが、特段何かを言いたいわけでもなさそうな顔だった。
ちなみに私が彼に話していたのは、祥平のことだった。昨日あの後祥平に迫られたこと、それを拒んだら祥平を怒らせてしまったこと、そして彼に、栄養失調にでもなって死ねばいいよ、と言われたこと。
そんな、私にとってはショックの大きい出来事を、誰かに聞いて欲しくて依央に話したのは良いが、目の前の彼はずっとこの調子である。
依央からの返答がないままなので、地面の砂埃を見つめた。そのまま無言のまま固まっていると、やっと依央が口を開いた。
「あのさあ、お前、正直ウザいよ」
え、と間抜けな声が私の口から飛び出た。
依央が私にそんなことを言うと思っていなかったのだ。だからこそ、私は心の底から落胆していた。何かを彼に期待していたのかもしれなかった。
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