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「あ、えと、その……」
ウザいよ、だなんて、陰で言われているのを耳にしたことはあっても、こんなにも直接的に言われるのは初めてだったので、困惑してしまう。
どうしたら良いかわからずに、視線をふらふらと泳がせる。そのうち彼がひとつ、ため息をついて、腕を組み直しながら私の方を見た。
「祥平とのことなんて、俺に言ってもどうにもならないだろ」
依央の口から飛び出した言葉に、耳を疑った。
ぐちゃぐちゃになったロッカーを助けてくれたのも、須藤さんたちからの嫌がらせに止めに入ってくれたのも、綾人くんのところから私を助け出してくれたのも、夏目先輩に話をつけてくれたのも、全部全部依央なのに、そんな彼が今、私が抱えている問題なんて、俺に言ってもどうにもならない、なんて言う。
「依央、どうして?」
「どうしてって、何が」
「どうしてそんなこと言うのかな、って」
私からの問いかけに対して、依央はすこしだけ迷った様子を見せる。彼の言葉をじっと待っていると、そのうち彼が諦め半分のため息をついた。
「ほら、みんな自分のことしか考えてない」
「皆?」
「お前もだよ」
彼の目が、まっすぐこちらを見つめている。手のひらに嫌な汗が滲むのを感じた。
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