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私を助けてくれた依央がそんなことを言うだなんて、と思うと、私は彼の発言がにわかに信じられなかった。
それに、彼の言葉が引っかかる。みんな自分のことしか考えてないって、どういうことだろう。
「依央、ごめん、どういうこと?」
わからないの、説明して欲しい、と彼に問いかける。
けれど彼は、無表情を貫き通して、向こうをただ見つめている。
「夏目先輩も、祥平も、綾人ってやつも、お前も、ずっとずっと自分本位だよ。いやになる」
「……ごめんなさい」
「いいよ、今更」
怒ってる? と尋ねると、別に、という言葉がぶっきらぼうに返ってくる。
「……じゃあ依央、もうひとつ聞いてもいい?」
「何」
「どうして、私のことを助けてくれるのかなって」
依央はその場で頭を悩ませているかのように、目を閉じながら押し黙った。私はその場に流れるいやな空気感を頬に感じながら、じっと、彼の言葉を待つ。
結局、彼の口から発せられたのは、想像もよらない言葉だった。
「お前らがキモくて、見るに堪えなかったから」
どちらかといえば最悪で、やっぱり少し悲しかった。彼の口からこぼれたその言葉を、そっと拾ってそれを解釈しては、私はなぜかひとり、傷ついたそぶりをした。
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