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◇
「どうして、今日も来てくれたの?」
「……別に」
あまりにも長い1週間が終わりを迎えた金曜日の夕方、昨日も来たはずの依央が、同じようにコンビニのビニール袋をその手に携えて、私の家にやってきた。
来て欲しい、と頼んだわけでもないし、彼の方から、行きたい、と言われたわけでもない。彼がなぜか突然やってきた、というだけの出来事で、嫌ではなかったけれど、すこし驚いた。
昨日と同じように、彼が私にゼリー飲料をふたつ、投げて寄越した。昨日彼からもらったものがまだ残っている、とは言わないことにした。
そして彼はまた、何も言わずにコンビニの袋から、今日は湯気の立ったカレーライスと、白いプラスチックのスプーンを取り出した。
きっと、コンビニで温めてから来たのだろう。一緒に袋に入っていたであろうゼリー飲料が、心なしか少しぬるかった。
「……いただきます」
「はい、どうぞ」
依央はこちらを見向きもせずに、目の前のカレーライスに夢中になり始めた。美味しそうに食べる彼の姿を捉えていると、カレーの香ばしい香りが鼻についた。
私はゼリー飲料の飲み口をそっと咥えて、その中身を口いっぱいに吸い上げた。爽やかなマスカットの味が広がる。いつも通りの当たり障りのない味。けれど少し、この味にも飽きてきた気もする。
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