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私がゼリー飲料を2つとも飲み終えた頃、とっくにカレーライスを食べ終えていたらしい依央は、そのごみと荷物をまとめながら、じゃあ、そろそろ行くから、と言って立ち上がった。
結局、依央がここにくる理由はわからないままだった。毎度ゼリー飲料だけを押し付けてくるので、私を心配しているのかもしれないとも思ったが、別にそこまでしてやる義理ないし、とか言いそうな気もして、私はあえてそれを尋ねることはしなかった。
「依央、次はいつ来るの?」
玄関先でスニーカーの靴紐を結ぶ彼になんとなくそう問いかけたとき、言葉選びを間違えた気がした。
これじゃあ、私が依央の来訪を待ち侘びているみたいだ。別に嘘ではないけれど、それが明らかになるのは少し恥ずかしい。
けれど、そんな私の困惑なんてまるで気にしてもいないかのような口調で、目の前の彼はくるりと顔だけをこちらに向けた。
「明日、来てもいいなら来るけど」
「……何時頃?」
「土曜日だし別にいつでも。あー、でも俺朝弱いから、夕方とかでいい?」
「わかった、待ってるね」
私の言葉に、彼は了解、と軽く言って、部屋を出て行った。
明日の夕方まで、随分と時間がある気がする。今からだって別に何もすることはない。眠れなくてもいいから、少しだけ、横になって休もう。
そんなふうに心に決めたときだった。
スマホの画面が、ぱっと光る。たまたまそれが目について、私は画面を覗き込んだ。
<なあ、返事してくれよ>
そのメッセージと、表示された名前を認識した瞬間に、ぞわり、と背筋が凍る。
差出人は、綾人くんだった。
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