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「可愛いね。僕の眠り姫は。時間になったら起こしてあげるから、ゆっくりそこで眠っていたらいいよ」
夏目先輩は私の額に軽くキスを落として、おやすみ、と言った。彼はそのまま立ち上がると、すぐそばの机に向かって、何やら作業をし始めた。
私は、夏目先輩と一緒にいるときにしか、安心して眠ることができない。
私の睡眠欲は、おかしくなってしまっているらしい。私は、眠ることを恐れている。いつも、いやな夢を見てしまうからだった。
夢の内容はいつも起きたら忘れてしまうけれど、起きた瞬間の心臓の拍動と、全身にかいた汗と、そして恐怖と焦りの感情がいつも生々しくて、私はいつの日か、自分の意思で眠ることができなくなった。
そんな私に手を差し伸べてくれたのが、夏目先輩だった。
彼といると、怖い夢を見ないことがわかった。それに先輩といると、自然に眠気がやってくる。ほら、今だって、瞼がどんどんと落ちてきている。
いつしか私は、生徒会室に通い詰めるようになっていた。夏目先輩は、週に何度か私をここに招いて、下校時間のギリギリまでソファーで眠らせてくれるのだ。
そうやって私は、束の間の休息を得ている。先輩はそんな私を受け入れてくれている。
私は、ゆっくりと目を閉じた。たまに先輩が立てる物音と、時計の針の音が心地よかった。
久しぶりに感じた安心感と共に、私は深い眠りに落ちた。
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