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ごめんなさい、できないです、と言って謝ってみるも、彼女たちがそれで納得してくれるはずがなかった。
そこに落ちていたビニール傘を拾って、早くしろ、と私を叩いてくる彼女たちがただ恐ろしかった。
「はーやく。もうカメラ回してるから。出来たら今日は終わりにしてあげるから。ね?」
スマホをこちらに向けながら一人の子が私に問いかけてくる。ビニール傘を持っている子は、それを使って私のスカートをめくりあげた。
恐怖で涙を流したのは久しぶりだった。頬に大粒の涙が伝う。けれど、ごめんなさい、と涙ながらに繰り返す私を彼女たちが解放してくれるはずもなく、むしろ彼女たちは苛立ちを募らせている。
早く、と彼女たちが急かしてくる。これさえ終われば、という言葉を脳内で繰り返して、私は唇を噛みながら、自分の右手をそこに這わせた。
そのときだった。
「え、何してんの、お前ら」
瞬間、目の前にいる3人の顔がその声の方に向けられた。私も遅れて、その方を見る。
そこには依央が立っていた。
彼はひどく顔を歪めながらこちらを見ている。私はその瞬間に自分の格好のひどさを顧みて、色々なところが見えてしまわないように身体を抱きかかえた。
空気が凍る。
けれど、私は頭のどこかで、やっぱり私を直接的に救ってくれるのは依央しかいないのかも、と思った。
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