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 メッセージアプリの連絡先一覧、とは言ってもそこまで数は多くない。  とにかくその画面を表示させると、一成がそれを覗き込んできて、上から順番に指を差す。 「これ、男?」 「……サークルの後輩」 「じゃあ消して。……うん。こっちは?」 「あ、これは上司だから、ちょっと」 「ほんと? トーク見せて?」  上司との仕事関係の話をしているトーク画面に遷移してそれを見せると、納得したようにわかった、次、と言う。  一成は私が嘘を吐くと思っているのだろう。職場の先輩とか、そういう、連絡先を残すためのラベリングを行った男性は、全員トーク画面を確認されて、その上で、残して良い、という判断が下された。  言われた通りに、消せと言われた男性をブロックしていく。職場の人以外はどうせ滅多に連絡しない人たちだ。連絡先なんてあってもなくても困らない。  ……困るのは一人だけ。  後半にかけてやってきた〈松田 終〉の表示。どきり、いやな予感がする。  一成は他と同じように、それを指差す。 「これは?」  考えろ。  思考を巡らせる。  今一番してはいけないのは、トーク画面を見られること。 〈たとえばだよ。また吐くまで飲みたいって言ったら、どうする?〉 〈今日の仕事終わり、迎えに行く。会社の住所送って〉  松田くんとの会話の一部を思い出す。  だめだ。アレを見られるわけにはいかない。ここは一度、ブロックしておくのが得策か。 「……高校の同級生」 「じゃあ消して」  ほ、と安堵が芽生え、彼をブロックした。  ブロック作業を全て終えた後は、ブロックリストから連絡先の完全削除を求められた。  それはひどく簡単な作業だった。ただ片っ端から削除するだけ。  もちろん、松田くんの連絡先もである。余計な思考は不要だった。
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