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 結局そのあとは、マッチングアプリを退会し、位置情報共有アプリを入れさせられた。私と一成の居場所が地図上に表示されて、お互いの居場所がわかるというものだ。とことん周到である。  全てが終わって、すみませんでした、と謝ると、一成はやさしく私を抱きしめて言った。 「俺、本当にみことと結婚する気なんだ。みことも覚悟固めて。もうこんなことしないって約束して」  重いな、と思った。  たかだか18歳、19歳の時に告白されて付き合っただけの関係。私はあんな早くに人生の大事な決断をしてしまったのだろうか。 「……わかった、ごめんね」  一成が結婚を急ぐ理由は、焦りの感情以外の何者でもない。  昔誰かがSNSで言っていた。社会人になると出会いがなくなる。できれば学生時代の恋人を大切にして、そのままゴールインした方が良い、と。  一成がその軌道に乗りたいのだろうということはわかる。彼はちゃんと普通の人間だ。性的嗜好も至ってノーマル。首絞めすらしてくれない。  だから同棲の話が出てきていたのだ。そのあとは婚約、両親への挨拶が待っている。レールには乗っておきたいのだろう。間違いなく、誰かを抱きしめておこうという算段。  一成らしいし、彼は何も悪くない。  だけど心のどこかには何かがつっかえている。 彼とはわかり合えない。そういう、薄暗い諦めがあった。  松田くんの姿が脳裏をよぎる。彼をやさしく抱きしめてくれる人はいるのだろうかと想像した。まあ、余計なお世話か。
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