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 明日は仕事だから家に帰ると言うと、一成はいつものように駅まで送ってくれた。  位置情報共有アプリを入れたのだから、別に見送らなくても私が無事かどうかはわかるだろうと思った。だけどそういう問題じゃないらしい。  久しぶりに一成と手を繋いだ。周りの人から見たら私たちはきっと普通の恋人に見えているんだろう。  繋がれた手は、愛情なのか。それとも、私を縛り付けるためのものなのか。私には判断がつかない。 「じゃあ、気をつけて」  一成は改札の前で手を離した。彼に手を振って、改札に入る。  何も考えずとも足が動いて、ホームにやってきた。電車が来るまであと5分。いつもはこの空き時間でマッチングアプリを開いていたのだが、それができないとなるとなんとも手持ち無沙汰だ。  なんとなく、先ほど一成と一緒に入れた位置情報共有アプリを開いてみる。  駅で止まっているのが私のアイコン。もう一つ地図上に存在する一成のアイコンは、彼の家のあたりに向かって画面上をにゅう、と滑っている。なんだか滑稽だった。  なるほど。大学時代に友人が言っていたGPSアプリはこういう感じだったのか。  お互いの場所を確認して何が楽しいのかと当時は思っていたけれど、こうやって恋人の行動を監視するため・されるためにやっていたと考えると、途端に合点がいった。  ゼロをプラスにするためではなく、ゼロをマイナスにしないための手法。うまくできている。本当にばかばかしい。
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