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彼氏である一成と、わたし、水瀬みこと の交際関係は、かれこれ5年ほど続いている。
元はといえば、一成は大学のサークルの先輩だった。
わたしが1年生、そして一成が3年生の秋ごろだっただろうか。彼に告白されて付き合うことになった、という、どこにでもある普通の話。
大きな喧嘩もないまま、気付いたら進級していて、そのうち一成が就活を終えて社会人になり、ほどなくして私も就活を経て社会人になっていた。大学生の4年間が人生の夏休みと評されるのは妙に納得できた。確かに、長いようで短かった。
基本的に私も一成も平和主義なので、別れるとか、別れないとか、そういった言葉が発されることもないまま、ただ年数だけを重ねてしまった。そういった感じが否めない。それについて彼がどう思っているかはわからないけれど。
週に1回くらいのペースで会って、一緒に過ごして、食事をとって、眠る。年に1回くらいは旅行をして、記念日にはすこし奮発したレストランで食事をする。
そういう、どこにでもある恋人同士の営みには何の不満もなかった。むしろ「普通」になれた気さえしていた。
だが彼は、ちゃんと男であり獣である。
「みこと、痛くない?」
「うん。へーき」
無表情なのを悟られないように、彼を抱き寄せた。
週に1回の情事。
私はこれにまったく興奮しない。
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