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 それともう一つ、やることがある。  位置情報共有アプリを閉じて、メッセージアプリを開いた。  周到なように見えるが、一成には少し抜けているところがある。  松田くんの連絡先。さっきは一成に言われるままにブロックして、削除してしまったけれど、私と彼はもともと高校の、しかもクラスメイトだったのだ。 〈3-B#卒業おめでとう〉  全く、連絡先を断たせるのであれば、入っているグループチャットも目の前で全て退会させるくらいの器量を見せてはくれないものか。  高校時代のクラスグループを開いて、メンバーを確認する。  まだ8割以上のメンバーが惰性で入っているグループだ。人目を気にする松田くんが、それを退会しているとは考えにくい。  画面を下に下にとスクロールしていく。そこには思った通りの名前があった。松田 終。あなたのこと。  彼の名前をタップして、ブロック解除、追加、を順番に触ると、平然と彼の連絡先が再追加された。  私がこんなに姑息だとは、さすがの一成も考えていなかったのだろう。一成、わたしたち、もう終わりだよ。  罪悪感はとっくの昔に擦り切れてなくなっていた。  だって、私は人の死をおかずにして自らを慰めている悲しき生き物だから。情けないけれど、終わりかけの扁桃体は感情すらまともに発してくれない。
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