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 同棲の件はまた次に会ったときにしよう、と話し合いを先延ばしにする言い訳をそれらしく突きつけると一成は納得した様子だった。この作戦はあとどれくらい持つだろうか。  できることなら同棲はしたくない。毎日一成から求められる苦痛は、同棲によって得られるメリットをゆうに上回る。  私は帰る準備をして荷物をまとめた。一成は果てたあと独特の気だるい雰囲気を片手に頭を掻いている。 「泊まって行ってもいいのに」 「明日、お互い仕事でしょ」 「まあ、そうか」  せめて駅まで送る、と言われてしまい、徒歩5分程度の道を一緒に歩いた。  22時12分。  終電にはまだまだ余裕があるけれど、もう少し、ぎりぎりまで一緒に居よう、だなんて可愛く言えちゃうような甘い関係段階はとっくの昔に通り過ぎていた。   今ここにあるのは、義務を果たした達成感と、明日の仕事に対する負の感情のみ。隣の男への愛はいつの間にか情に変わっていた。  改札の前で、一成に手を振る。さらっと解散して、ひとり改札の中に入った。  疲れた。一成と居るのは楽だけど、満たされない行為をするのはどうにかならないのだろうか。彼との性行為はレスである方がマシだとすら思える。  ホームは人がまばらだった。  空いているベンチに腰掛け、マッチングアプリを起動させた。日課である。
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