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 次々に表示される写真を、ナシ、ナシ、アリ、ナシ、ナシ、ナシ、アリ、と選別する行為は、まるで自分が"選ぶ側"であるかのような錯覚をもたらした。  現代的人身売買  ルッキズムの温床  経歴詐称  そんなことばが頭の中をハイスピードで飛び交った。  身長170cmの男はどうせ168cmしかないし、  寂しがり屋だと自己申告する男は浮気をするし、  19歳を自称する男はたいていホストの営業。  流行りの漫画の、人気キャラのスクリーンショットを自己紹介画像に設定している男は総じてイカれている。格好良いのはマイキーであってお前ではない。  彼氏のいる私がマッチングアプリをやる理由は、他でもない性交渉のためだった。純情な乙女たちに告ぐ。マッチングアプリの男たちは誠実そうに見えても、つつけばすぐ下半身を露わにする。  しかし私かて、その点のキモさは、こいつらと一緒である。わたしも、どちらかといえばつつけばすぐ下半身を露わにする人種だ。  だけど性交渉をするのであれば少しでもマトモな人であってほしい。これは私のエゴ。  顔は整っている方が良い。  清潔感がある方が良い。  余裕がある人の方が良い。  ——できれば、Sっぽい人の方が良い。  人間の選別に飽きて、隣のタブからトーク画面に切り替えた。  比較的、マトモだと判断した男からメッセージが来ている。数日前にマッチングしたmさんだ。 〈明日、19時に駅前集合でどうですか?〉
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