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仕事終わりの午後19時。
マッチングアプリでメッセージをやり取りしていた彼、mさんとの待ち合わせ場所に到着する。
アプリを開いてトーク画面を確認すると、すでに彼の方からメッセージが来ていた。
〈着きました。どんな服着てますか?〉
どうやら彼も到着しているらしい。私は自分の服装を簡潔に知らせる。
〈こちらも到着しました。黒いスラックスに茶色のジャケットを羽織ってます〉
〈わかりました。それっぽい方がいるので声かけてみます〉
少し経ち、眼前に人の気配を感じて顔を上げると、目の前にはゆるいシャツと太めのジーンズをおしゃれに着こなす男性がいた、のだが。
「……え? 松田くん?」
目の前にいる彼の顔には確かに見覚えがあった。咄嗟に口をついて出た名前が間違っていないだろうかと不安になったが、同時に、間違うわけがない、とも思った。
彼の方も私の顔をすこしの間じっと見つめてから、何かを思い出したかのように目を見開いた。
「あ、水瀬さん、?」
「うん。水瀬みことです。3年B組の」
「え、アプリの子って、水瀬さんだった? 人違い?」
「いや、私もアプリの人と待ち合わせしてたから……」
お互いのスマホに表示されるマッチングアプリのトーク画面。どうやら人違いではないらしい。
なんとなくお互いに状況を察したようだった。高校の時ぶりかな、とお互いに浮かべる苦笑い。気まずさレベルはすでにカンストしている。
やってしまった。いつかはそんなこともあるだろうと覚悟はしていたが、まさかこんなに早くこの時がやってきてしまうとは。アプリで待ち合わせていた相手が知り合いだったなんて、女子会のネタにしかならない。
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