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〈続いてのニュースです〉  テレビの中のアナウンサーが、手元の書類にちらりと目を通してから、再びこちらを見る。 〈〇〇県××市で、小学生女児へわいせつな行為を繰り返し行ったとのことで、同市に住む会社員の30代男性を逮捕しました。 調べによりますと、容疑者は……〉  手に持っていた酎ハイの缶をこつん、とテーブルに置いた。中身はだいぶ少なくなっている。  アルコールでぼうっとした頭が、曖昧にそのニュースの情報を取り込む。  小学生に繰り返しわいせつな行為。物騒なものだ。  なんとなく隣に視線をやってみる。そこには、同じニュースを見て顔を顰める恋人の姿がある。  彼は右手に缶ビールを持っていて、それを一口飲んでから、ふう、と息を吐いた。 「ロリコンとか、キモすぎ」  吐き捨てられた言葉が、テレビに映し出されたニュースの犯人に対してのものだということをすぐに理解した。そして、同意を求められていることも瞬時に察する。  長年彼と付き合い続けていたからこそわかる、空気感。  「ひどいよね」とひとこと漏らす。  彼は当たり前のように、「こんな奴、死ねばいいのに」と重ねた。  アルコールをもう一度喉に流し込んだ。  ひどく気分が悪い。
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