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少しすると千秋が戻ってきて、一連の流れを私に説明してくれた。
「とりあえず、彼氏は帰ったよ。暴れたりとか、そんな事は無かったから安心して」
「あ……窓越しに少し聞こえてました……」
「聞こえてた? ……ごめんね、勝手に倒れた事にしちゃったんだけど、ああ言えば自分のせいで片岡さんが倒れたって思って怖気付くんじゃないかなって」
上手くいったみたいで良かったよ。と、頬を掻きながら笑う千秋。
私では到底思いつかないような方法で彼氏を追い返してくれたことで、ますます千秋を尊敬したんだっけ。
「ただ、片岡さんの両親も知ってるとか救急車を呼んでるとか少し言い過ぎちゃったから、辻褄を合わせておいた方が良いかも……。ごめんね」
「そんな、謝らないでください! こんなに穏便に解決してくださって、本当にありがとうございます」
「はは、そんな、困った時はお互い様だよ。助けになれて良かった」
そう言って優しく微笑む千秋。
千秋はこの後、「一人で居るのは危ないから」と、私の実家まで送ってくれて、両親にも一緒に説明してくれた。
その後何日かは、彼氏が家まで来るかもと怖くて実家で過ごしていたけど、連絡が来ることも会うことも無く、送られてきていた乱暴な口調のメッセージは、気づいたら全部削除されていた。
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