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「え、そうなの?」
「うん。やっぱり居酒屋のバイトって終わる時間が遅いからさ、生活リズムが狂うなって。今更だけど」
「確かに、もう半年以上働いてるのに、今更だね」
照れたように言う千秋が面白くて、ふふと笑いが零れる。
と同時に、デザートのチーズケーキをフォークで掬いながら、待てよ、と頭の中で心配が浮かんだ。
……私も辞めようか悩んでたけど、同じタイミングで辞めたら便乗したみたいで、千秋くん、嫌かな。
どうしよう、とケーキを見つめながら少し考えていると、「それでさ」と、千秋が口を開く。
「俺がよく行ってる喫茶店でバイト募集してたからそこに応募しようと思ってるんだけど、良かったら妃奈ちゃんも一緒に受けてみない?」
「……え?」
「今のバイト、辞めたがってるんじゃないかって思ったんだけど、違った?」
「……なんで分かったの?」
まるでエスパーのように、私の考えを言い当てる千秋。
千秋には言ってないのに、何で分かったのか不思議に思っていると、千秋が目を細めて頬杖をつく。
「見てたら分かる……とか言ってみたいけど、実は妃奈ちゃんのお母さんに偶然会った時に相談されたんだ。妃奈がバイトが辛いって言ってたけど、そんなに大変なの? って」
……お母さん、いつの間に……。
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