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「……実は、そう。最近ちょっと……嫌な事が重なって、辞めたいなって思ってたの」
「実は俺も、最近妃奈ちゃんがバイト中に元気無いなって思ってたんだ。でも俺が話しかけたら、妃奈ちゃんやたら元気に振舞おうとするから」
「……バレてたんだね。千秋くんには敵わないなぁ」
「妃奈ちゃんの事はお見通し、って言っていいレベル?」
「言っていいレベル! エスパー!」
何だか妙におかしくて、ははは! と、思いっきり笑ってしまった。
千秋も一緒に笑ってくれて、ファミレスで爆笑してる、変な二人が出来上がってしまった。
「……はー、何かめっちゃ笑っちゃった」
「そのケーキ、アルコール入ってんじゃない?」
「えー、入ってないよ。お酒入ってるデザートあんまり好きじゃないもん」
「はは、そっか。違ったか」
――ひとしきり笑って、何だか吹っ切れた私は、結局千秋と一緒にバイトを辞めた。
千秋は女の子達に引き止められたり、連絡先を聞かれたりしたみたいだけど、全部断ったらしい。
千秋が誘ってくれた喫茶店は優しい老夫婦が営むお店で、腰が悪くなってしまった奥さんの代わりに、二人ほどバイトを募集していたらしい。
常連だった千秋とその紹介で行った私を店長のおじいさんはものすごく歓迎してくれて、即採用になった。
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