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何だろう? と、愛美の視線の先を探ってみると、食堂の中によく見慣れた人物が立っていた。
「千秋くんじゃん。……はー、今日もモテモテだね。三年の先輩に手振られてるよ」
食堂の中を歩く千秋を見つけた女の子達が、嬉しそうにヒソヒソと話したり、笑顔で手を振ったりしている。
千秋は手を振っていた先輩達に軽く会釈をしながら、友達と一緒に空いてる席を探してるみたい。
「アイドル扱いじゃん。やばいね、モテすぎでしょ」
「千秋はかっこよくて優しいからね〜」
「あー……まぁ、見た目は王子様感あるよね」
「見た目だけじゃなくて中身も王子様みたいだよ」
愛美は千秋と二人で話したり遊んだりすることはないから、あわよくば二人が仲良くならないかなって、隙を見て千秋の良さをプレゼンしてる。
でも、いつも「はは」と笑われるか「ふーん」と言われるだけだから、多分私はプレゼンが下手なんだと思う。
今回も短く笑われて終わりかな、と思いながらそう言うと、食堂の方を向いていた愛美の顔がくりっとこちらを向き、瞳に私が映った。
愛美の目の中の私は、驚いたのか、プリンを中途半端に持ち上げ、口を少し開けた間抜けな顔をしている。
「今回も、千秋くんに慰めてもらったの?」
頬杖をついたまま、首をかしげる愛美。
長い茶色の髪が肩からはらりと流れ落ちて、髪の毛が光に透けている。
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