12人が本棚に入れています
本棚に追加
「……あのさ、千秋くんは駄目なの?」
「え?」
「彼氏。千秋くんと付き合うのは無しなわけ?」
愛美の大きな瞳が私をじっと見つめる。
投げかけられた質問に一瞬戸惑ったけど……私の心は決まってる。
「千秋は……友達だから」
「ふーん……」
思わず目を逸らしながらそう言うと、私の気持ちを見透かすような愛美の相槌が聞こえる。
……嘘は、言ってない。千秋は友達だから。
机に視線を落としながら、愛美が何を言うか待っていると、「げっ」と小さく呟く声が聞こえた。
その声に釣られて顔を上げると、私の後ろに視線を向けて何だか嫌そうな顔をした愛美が目に入ったから、急いで私も後ろを向く。
と、そこには、先程食堂の中に見つけていた、千秋とその友達――湊くんがこちらに向かって来ていた。
「愛美ちゃーん! 妃奈ちゃーん! 三日ぶりー!」
「おい、湊! 突然走って行くなって!」
元気いっぱいな湊くんが駆け寄ってきて、後ろから千秋が追いかけてくる。
千秋の止める声は聞こえていない様子で私達の席まで走ってきた湊くんは、満面の笑みで愛美の隣に座った。
「お昼食べてたら湊が二人のこと見つけて、どうしても行きたいって聞かなくて……。お邪魔しちゃってごめんね」
「なかなか会えないからさ、チャンスは大切にしないとね!」
最初のコメントを投稿しよう!