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「千秋、何で断ったの? もったいね〜」
愛美に軽くあしらわれてもダメージを受けていない様子の湊くんが、口を尖らせながらそう言う。
……私も、理由、気になるな。
千秋は、今度は大きくため息をついたかと思うと、少し面倒くさそうに湊くんの問いに答える。
「何でって、好きじゃないからに決まってるだろ。湊は愛美ちゃん以外の人に告白されて付き合うのか?」
「付き合わねぇ! 愛美ちゃん一筋!」
「そういう事だよ」
クールに言い放った千秋の言葉に「なるほど!」と感心した様子の湊くん。
そっか。千秋は、告白されても好きじゃなかったら付き合わないんだ。
告白されたらとりあえず付き合っちゃう私とは大違いだ。……何だか、自分が情けない。
「……どうかした?」
少し自己嫌悪に陥っていた私に気づいた千秋が、首を傾げながら私の顔を覗き込む。
私が落ち込んでる理由なんて、自業自得すぎて言えない。
笑顔を作って「ううん、何でもないよ」と言うと、千秋はそれ以上聞いてこない。
聞いて欲しくない時は必要以上に踏み込んで来ない千秋は、まるで私の心が読めるみたいだ。
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