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「……愛美?」
どうしたんだろ、と恐る恐る名前を呼ぶと、愛美の目がふっと緩み、「別に?」と不敵な笑みを浮かべる。
「千秋くん、改めて近くで見ると本当に格好良いね」
「で、でしょ!?」
「優しいし、サラッと気遣いもできちゃうし」
「そうなの!」
珍しく愛美が千秋を褒めてくれて、何だかすごく嬉しくて声が大きくなる。
大好きな二人が仲良くなってくれたら、本当に幸せだから、是非ともこの機会にきっかけを作っておきたい……!
千秋の良い所をプレゼンしようと身を乗り出すと、私が口を開く前に愛美が「でもさ」と呟く。
「妃奈はさ、千秋くんとは付き合う気無いんだよね?」
「……え?」
突然投げかけられた、先程と同じ質問。
「千秋は友達だから……」と小さく答えると、愛美は「だよね」と頷き、頬杖をついていた手を動かすと指を組み、ゆっくりと顎を置いた。
「私、千秋くん狙っちゃおうかな」
愛美の放った言葉に、ドクンと、心臓が激しく脈打つ。
頭を叩かれたような、強い衝撃。自分の鼓動が耳に響いて、周りの音が遠くなるような感覚。
愛美が、千秋を、狙う……?
言葉の意味はしっかり理解しているのに心が受け入れたがらなくて「え……?」と、思わず声が漏れる。
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