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私の頬をむにむにと伸ばしながら「なーにが友達よ」と、からかうような口調と楽しそうな笑顔。
「千秋くんのこと好きなくせに強がっちゃって。さっきの妃奈の顔すごかったよ。今にも泣きそうで感情ぐっちゃぐちゃって感じ」
鬼の首を取ったような心底楽しそうな愛美に、やられた、と自分の状況を理解する。
愛美がかけたカマに見事に引っかかった私は、愛美の言葉を認めざるを得ない。
……そう、私は千秋が、好き。
「ねぇ、告白しないの? 千秋くんにさぁ」
「……愛美、面白がってるでしょ」
「え〜? そんな事ないよ〜。私は妃奈の幸せを願ってるんだから」
まったく説得力のない、ニッコニコな笑顔でそう言う愛美。
楽しそうな愛美とは裏腹に、私の気持ちはズンと重い。
……千秋のことは好きだけど、告白するつもりは、無い。
「……千秋は優しいから告白したら付き合ってくれるかもしれない。でも、付き合ったら後は別れるだけでしょ?」
ぽつり、私の口から零れる後ろ向きな本音に、愛美はさっきまでの笑顔を消し、真剣な表情を浮かべる。
「今までの彼氏と別れた時も十分辛かったのに千秋まで居なくなったら……私、きっと耐えられないから」
だから、告白はしないんだ。
目を伏せながらそう呟くと、愛美は一呼吸置いた後、その体を背もたれに預け、
「千秋くんなら大丈夫だと思うけどね」
そう言って優しく笑ってくれたけど、私の気持ちを汲んでか、それ以上この話を続けることはしなかった。
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