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だけど千秋と私が働くようになってから、若い男の人や女の人の来店が増え、特に休日は結構忙しい事が増えた。
そのきっかけは、ある日に訪れた二人組の女の子達だった。
その人達は、お店に入り席に着くや否や、「外で掃除してた男の店員さんはすぐに戻ってきますか?」と聞いてきた。
「えっ……」
「私達、その人を見てお店に入ってきたんです! できたらお兄さんに接客して欲しいなぁ」
予想外の注文にどう答えたら良いのか戸惑っていると、奥でそれを聞いていた店長が「千秋くん呼んできてあげて」と、穏やかなトーンで言う。
店長の言葉通りに千秋を呼び戻すと、女の子達は「やっぱ格好いい〜!」と黄色い声をあげながら、千秋に話しかけていた。
「ご注文はどうされますか?」
「え〜、お兄さんの連絡先っ!」
「はは、生憎そちらは取り扱いがございませんので、当店おすすめのアップルパイはいかがですか?」
「じゃあそれ二つ〜、飲み物はぁ……」
女の子達の黄色い声を見事に躱しながら、冷静に注文をとる千秋。
アップルパイとアイスコーヒーを注文した二人は、頬を赤く染めて千秋を見ながらヒソヒソと何か話しているようだった。
「お待たせしました。こちらアップルパイとアイスコーヒーです」
「え〜、お兄さんじゃないの〜?」
丁度他のお客さんの接客をしていた千秋に変わって注文の品を持っていくと、心底残念そうにそう言われてしまった。
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