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千秋の写真を撮ろうとしていたらしく、スマホを手に持ちながら「最初に撮っといたら良かったぁ」と口を尖らせる女の子達。
相変わらずどう反応したら良いのか分からなくて中途半端な笑顔を浮かべながら、「ごゆっくりどうぞ」とその席を離れた。
「折角カメラアプリ起動したしアップルパイ撮っとこ〜」
「私もそうしよっと」
女の子達は数枚パシャパシャと写真を撮った後、「お兄さん近く来ないかな〜」と喋りながら、流れ作業のようにアップルパイを一口、口に運ぶ。
と、その一口が口に入った途端、彼女達の表情が今までとは違う、キラキラと輝くものに変わった。
「え、何これ、うま……」
「え、やばいね……」
店長自慢のアップルパイは、女の子達の興味を釘付けにする美味しさで、さっきまで千秋の事を話していたその口からは感動の声が止まらなくなった。
あっという間に食べてしまった二人は、「え、もう一個食べたいんだけど……」「分かる……」と、お皿を見つめながら言い合っている。
結局テイクアウトでアップルパイを頼んだ彼女達は、「絶対にまた来ます!」と店長に言った後、ケーキの箱を抱えて嬉しそうに帰って行った。
「店長のアップルパイが千秋の格好良さに勝ったね」
「はは、当たり前でしょ。店長のアップルパイは本当に美味しいからね」
「いやぁ、照れるねぇ……」
いつもとは違う来客のあったその日は、店長のアップルパイパワーでほっこりと終わった。
……変化が起きたのは、その三日後の事だった。
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