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その日は、私と交代で入る予定だった人が体調不良で、突然バイト時間が伸びた日だった。
その事を連絡する余裕も無いくらい忙しくて、あっという間に時間は過ぎて、退勤時間。
千秋も同じ時間に終わりだったから、休憩室で一緒に帰る準備をしていた。
「……忙しかったですね」
二人っきりの空間で何も話さないのも変かと思って、当たり障りない言葉を発する。
千秋も「大変だったね」と返事をしてくれたけど特に会話も思いつかなくて、結局は黙々と準備をすることになった。
エプロンと三角巾を洗濯機に入れて靴を履き替えたところで、私のスマホが絶えず振動している事に気づく。
見てみると彼氏からで、メッセージが何十件も届いていて、今もどんどん増え続けている。
そこで初めて、バイト時間が伸びた事を連絡していなかった事を思い出し、顔面蒼白になる私。
少し異常なメッセージの数に怖気付いてしまい中身を見るのを躊躇していると、画面がパッと変わり、着信のマークと彼氏の名前が表示された。
何を言われるんだろう……と怖かったけど無視する訳にもいかず、恐る恐る電話に出る。
移動できる部屋がなくて千秋がそこに居たから、なるべく小声で「もしもし……?」と応えると、電話の向こうから今まで聞いたことのない、ものすごく怒っている彼氏の声が飛び込んできた。
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