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止めてくれた椎名さんには申し訳ないけど、やっぱりそれしかない気がする……。
思い詰めた私が無謀な事を口にしようとすると、その前に千秋が「じゃあ」と、口を開く。
「とりあえず、俺が店の前で片岡さんの彼氏を止めるよ。他人の俺が出ていった方が冷静になりやすいと思う」
「えっ、でも、そんな危険な事をさせる訳には……」
「片岡さんが一人で行く方がよっぽど危険だよ。大丈夫、俺結構強いんだ」
腕を曲げ筋肉を見せるポーズをしながら、いたずらっぽく笑う千秋。
「でも……」と渋る私に、「大丈夫、上手くやるよ。片岡さんはここから出ないでね」と言って、止める間も無く千秋は部屋を出て行ってしまった。
千秋の言う通りここに居るべきか今すぐ追いかけて止めるべきか迷って、やっぱり……! と、椅子を立ちかけると、ブブ、とスマホが小刻みに振動する。
恐る恐るスマホを見ると、『もうすぐ着くからな』と、彼氏からのメッセージ。
さっきの恐怖が蘇り、顔から血の気が引くのを感じていると、窓の方から聞き覚えのある声が聞こえてきた。
「……だから、バイトの片岡妃奈、居るだろ? 出してくれよ」
……彼氏だ。
さっきの電話よりは少し落ち着いているけど、やっぱりいつもより口調が荒っぽくて……怖い。
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