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何度目になるかもわからない閣僚会議中、防衛大臣は一つの決断を下した。
「超法規的措置を取り、自衛隊による防衛出動を行う」
それを聞いた国土交通大臣は渋い顔をしながら、防衛大臣の顔をじっと見つめる。
「消防自動車での放水で海に引き返すように誘導では駄目でしょうか」
こんな時に何を悠長で手緩いことを宣うか。総理大臣は訝しげな目で国土交通大臣を見つめた。
「あの規模の生物を前に放水を当てたとしても小雨程度のもの。数百数千台の消防自動車を集めたとしても大きな水たまりを作るだけ。税金の無駄です」と、防衛大臣はバッサリと国土交通大臣の案を切り捨てた。すると、文部科学大臣が同意はせずとも擁護に入る。
「確かにそうですね。税金の無駄ですね、でも…… 自衛隊の武器を使っても同じ結果になると思います」
「戦闘ヘリのミニガンや、ミサイル。戦車砲が効かないとでも?」
「世界最大の空母とほぼ同等の大きさをもつ超巨大生物。人間に豆鉄砲や花火をぶつけるものです。痛さは感じますが…… 死にはしません。恐竜と言うものはあの大きさで脳は極端に小さいもの。脳みそが梅干しサイズなんですよ。痛覚に関しては極めて鈍いと言っても良いです。何をやっても九牛の一毛です」
「自衛隊の武器では無駄だと言いたいようですな? なら、在日米軍に頭を下げますか? 横田基地にとっても余所事ではないから緊急出動はすぐにかかりますよ?」
と、国土交通大臣。総理大臣は首を横に振る。
「対生物は日米安保の枠には入らないよ。あの恐竜が他国の超弩級兵器なら日米安保適用、天下御免で在日米軍が出動出来るのだがな。ついでに言うなら、対生物の殺処分に自衛隊が出動することもあってはならんと思うのだがね…… と、野党が言ってきたよ。リモートでね」
野党はもう逃げているのか。国土交通大臣は舌打ちを放ってしまう。
「今頃、横田基地の飛行場は北は千歳行き、南は嘉手納行きの輸送機でごった返してそうですね」
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