ただいまの意味

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「普通、あのような竜脚類恐竜は首が弱いんですよ。樹上の葉っぱを食べるために首を大きく持ち上げますからね。骨も細くてスカスカで軽くなきゃいけないのです…… 骨粗鬆症レベルでスカスカなんですよ。スカスカの骨に筋肉をつけると折れるぐらいに脆いんです」 「首に筋肉がないだと?」 「ええ、靭帯のみで首を支えてるんです。靭帯も硬いには硬いですが、機関銃の前では紙のようなものです」 「なら、何で効いてないのかね?」 「我々人類が見つけた恐竜の化石から分析した生体が見当外れだったのでしょう。化石からの分析であれば、とうに首は刎ねられています。そもそも、あれだけの巨大生物が生きて歩いていることがありえません! アフリカゾウだって一日の大半を食事に費やして生命活動を維持しているんです! それよりも遥かに大きな恐竜が通りすがりの山の木を食べる程度で生きていられる筈がないんです! 人知を超え、生命の(ことわり)から逸脱した『怪獣』ですよ! あいつは!」 防衛大臣は冷静さを欠き、言葉を荒げ苦虫を噛み砕いたような顔をしながら、次の指示を行う。 「ミサイル発射! 肉片にする勢いで撃つのだ! 戦車隊は目標が射程範囲内に入った瞬間に連射!」  総攻撃が行われた。しかし、恐竜は意に介すことなくズシンズシンと前進を続ける。 爆煙の中、威風堂々と歩く恐竜の姿を前に皆は恐怖を通り越した恐怖を覚えてしまう。 死を覚悟し呆然とする者、最後まで諦めずに攻撃を続ける者、手を合わせ膝を折り祈る者、逃げ出す者。様々であった。 恐竜は彼らなどいないかのように、東京都心に向かって前進を続けるのみ。  何をして無駄だった…… 防衛大臣はチクシュルーブ作戦の失敗を宣言。 東京都心からの都民の避難誘導へと作戦を切り替えるのであった……
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