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官房長官によるチクシュルーブ作戦の失敗の報告後、何度目になるかもわからない閣僚会議が開かれた。官房長官は空席が増えたことに気が付き、総理大臣に呟く。
「寂しくなりましたねぇ。会見に来る記者もいつもは見ない若い記者ばっかり、皆、逃げてますねぇ」
「今の東京は世界で一番の危険地帯。地元選挙区に帰ったのか、海外に旅行たのかは知らんよ。無断欠勤ってやつだ。官僚も議事堂に来るような者を除いては全員逃げ出したのか、霞が関もゴーストタウンだ」
「何が起こっても仕事を続けるって日本人が揶揄されてた頃が懐かしいですね」
「現実に起こってしまえばこんなもんだ」
「国会議事堂もかなり人減りましたね。野党は誰一人顔見なくなりましたよ」
総理大臣は軽く皮肉を込めて笑いを見せた。
「野党からリモートでさんざ文句言われたよ。特にチクシュルーブ作戦の失敗をね」
そこに文部科学大臣が割り込む。
「あの恐竜は人知を超えた存在。誰が…… いえ、世界中のどの国が作戦を行っていても結果は変わりませんでした。それを真っ先に逃げ出した野党に文句を言われる筋合いはありません」
「言うな。相手が天災であれ、恐竜であれ、我々の失態は失態。文部科学大臣も、来年の選挙を考えなければいかんよ? 君は確か選挙区東京だったね」
「瓦礫の街中を選挙カーで走れと?」
「何を言ってるんだね。リアカーで走るんだよ、それにするのは選挙運動ではない復興活動だ。我々も一緒にな」
「総理…… それすらも出来そうにないですよ……」
「東京を無に帰すやもしれんな。あの調子なら、関東一円を無に帰すだろう。こうなれば復興活動も無からだ。西に行くにせよ北に行くにせよ、自衛隊が防衛ラインを敷くだろうな。チクシュルーブ作戦以上の陣を組んだとして、突破される率は?」
「十割ですね。日本の戦術では恐竜は倒せません。他国の戦略で完全殲滅ぐらいしか思いつきません」
「別のところに首都機能を移転しても、恐竜が来てはどうしようもないな」
「東奔西走、日本全部破壊し尽くしますね」
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