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それから、米が届いた。少しづつだが、荷車に山のように積んだ米が、断続的に。
透明な綺麗な米で、全部がきちんと包まれており、誰もが喜んだ。
「姫様、いったい、どこから?誰が?何のために来てるんでしょうね?」
子鈴に代表されるように、王城内では理由が知らされておらず、誰もが疑問に思った。
(米が届いた、嬉しいわ。いったい誰かしら。本当に感謝したい)
米不足が解消されて、町には活気が戻った。
煮炊きする小屋で、蘭の周辺でも人々が安心して暮らし始めた。国の社会福祉を施す王の娘として、蘭の仕事も存分に果たせた。
「わあ、姫様のおかげですね、さすが姫様だ。本当に、姫様のおかげだ」
「賢明で慈愛深い王女様。ありがとうございます」
「い、いえいえ、あの、うん、良かったわね・・・」
村人に感謝されても、蘭も分からなかった。
穀物を管理する卿や部署に聞いても、出所は誰も分からなかった。しかし、国王は知っているようだった。
「父上、なぜ、米が?まさか、隣国の王が?」
「お前も気づいたか。まあ、そろそろ、頃合いだから言おう。相手は我が国との国交を心良く思わぬ周辺国の手前、表だって友好的な態度を取らなかったが、こちらと誼を通じたいと思っている。それは、お前がいるからだ」
「え・・・?」
「気づかなかったか?相手はお前に嫁いで欲しいと言っている」
「私?他ではなく、私に?」
「何を言っている、お前もそのつもりで、先日、あちらの王城へ行ったのでないか?先日、お役目大事と駆けこんだお前を見て、王が旧交の思いを新たにしたそうだ。お前も賢明な王女と言われ、隣国の賢明で大人しい王のことは尊敬していたはず。良かったな」
「それは、我が国の友好として、ですか?」
「どっちもだろう。お前も悪くないのだろう。我が国ともそろそろ、通常で友好的な関係を結びたい。それはこちらの意思でもある」
なんなの、あの人、あの時、何のそぶりも見せなかった。
嫌に弱気ね。前はもっと狂暴だったのに。
気に入ったのなら、あの後、手紙や贈り物でもしてくれたら分かったのに。なぜ、米なの?そんなの、分からない。私なのか、米のためなのか。
やがて、荷も届き始めた。綺麗な反物、家具などだ。
それからも、国への援助は途絶えなかった。
「ひ、姫様、大変です」
やがて、ある日。老爺から言われた。隣の国王が倒れた、と。
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